Japanische Klassiker mit Furigana
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にじゅうしんぞう
二重心臓
夢野 久作
Lesen Sie 二重心臓 (にじゅうしんぞう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.188 Zeichen · 129 Bildschirme
「……オットット……その窓は、そのまんま開け放しといた方がいいね。閉め切っとくと、オマハンの首に縄がかかるんだ。ハハハハハハ……」
やがてバラバラと雨の音……烈しい電光……。
あとを見送った呉羽はホッとため息した。そうしてニッコリとあざみ笑いをしいしい入口の扉の把手を、袖口でシッカリと拭い上げてから、舞台正面、中央の青ずんだフットライトの前まで来ると、大きな眼をパチパチさせてビックリしたように場内一面の観衆を見まわした。……すると……その背後の天井裏から新調らしい、真白い緞子の幕がスルスルと降りて来て、一切の舞台面を霧のように蔽い隠した。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒホホホホホホホホホハハハハハ……」
底の抜けるほど朗らかな、明るい呉羽の笑い声が、満場におののき渡った。
トタンに場内の片隅から、低いけれどもケタタマシイ、慌てた声が起った。
「芝居だよ芝居だよ。タカが芝居じゃないか。ビクビクするな。シッカリしろ……シッカリして舞台を……アッ。いけねえいけねえ。脳貧血脳貧血。チョット誰か……来て……」
そうした若い男の声が、一層モノスゴク場内を引締めた。
しかしその声の方向を振り向いて見る者すら居なかった。