Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にかいから

二階から

岡本 綺堂

Lesen Sie 二階から (にかいから) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.761 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は悠然として滝の下にうずくまる。そうして、楓の葉を通して絶間なしに降り注ぐ人工の雨に浴している。バケツの水が尽きると、甥と下女とが汲み替えて遣る。蛙は眼を晃らしているばかりでちっとも動かない。やがて十分か二十分も経ったと思うと、彼は弱い女のような細い顫え声を高く揚げて、からからからというように鳴き始める。調子はなかなか高いので二階にいる私にも能く聞えた。

こんなことが十日ほども続くと、彼は何処へか姿を隠してしまった。甥がいくら苦心しても、人工の雨では遂に彼を呼ぶことが能なくなった。甥は失望していた。私も何だか寂しく感じた。

それから四日ほど過ぎると朝から細雨が降った。どこやらでからからからという声が聞えた。甥は学校へ行った留守であったので、妻と下女とはその声を尋ねて垣の外へ出た。声は隣家の塀の内にあるらしく思われた。塀の内には紫陽花が繁って咲いていた。

「奥さんここにいますよ」と、下女が囁いた。蛙は塀の下にうずくまって昼の雨に歌っているのであった。下女は塀の下から手を入れて難なく彼を捕えて帰った。もう逃げるのじゃないよといい聞かせて、再び彼を築山のかげに放して遣った。