Japanische Klassiker mit Furigana
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にかいから
二階から
岡本 綺堂
Lesen Sie 二階から (にかいから) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.761 Zeichen · 30 Bildschirme
容貌はあまり好くなかったが、人間が正直で、能く働いて、相当の着物も持っているのであるから、奉公人としては先ず申分のない方であった。諄くもいう通り、甚く温順い女で、少し粗匆でもすると顔の色を変えて平謝りに謝まった。
彼女は「だいなし」という詞を無暗に遣う癖があった。ややもすると「だいなしに暑い」とか、「だいなしに遅くなった」とかいった。病気も追々に快くなった甥などはその口真似をして、頻りに「だいなし」を流行らせていた。
妻も彼女を可愛がっていた。私も眼をかけて遣れといっていた。が、折々に私たちの心の底に暗い影を投げるのは、彼女の腹に宿せる秘密であった。気をつけて見れば見るほどどうも可怪いようにも思われたので、私はいっそ本人に対って打付に問い糺して、その疑問を解こうかとも思ったが、可哀そうだからお止しなさいと妻はいった。私も何だか気の毒なようにも思ったので、詮議は先ずそのままにしてしばらく成行を窺っていた。
月末になると請宿の主人が来て、まことに相済まないがおたけに暇をくれといった。段々聞いてみると、彼女は果して妊娠六ヵ月であった。彼女は郷里にある時に同村の若い男と親しくなったが、男の家が甚だ貧しいのと昔からの家柄が違うとかいうので、彼女の老いたる両親は可愛い末の娘を男に渡すことを拒んだ。