Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとのくに
人の国
豊島 与志雄
Lesen Sie 人の国 (ひとのくに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.761 Zeichen · 16 Bildschirme
夜更しをして朝寝の習慣がついている久保田さんには、太陽と一緒に起上るということが、そう容易くは出来なかった。前晩頼んでおいた女中や夫人に声をかけられても、一寸返辞をしたきりで、も少しと思って躊躇しているうちに、またうとうととするのだった。
そういうことを幾度か繰返した後、久保田さんは遂に或る朝、太陽より少し後れて、六時頃起き上ることが出来た。而も奇蹟的に、誰にも起されずに訳なく出来たのである。
何だかちらちらとしてはっきり分らなかったが、そのちらちらとした中から、三分の一ほど欠けた不恰好な月がひょっこりと浮び出して、久保田さんの頭にはっきり映った。前晩窓を閉める時に、隣家の大きな欅のしなやかな枝先に引っかかっていた、その月だな……と思うと同時に、久保田さんは本当に眼を覚して、二つ三つ瞬きしたが、そのままふと起上ってしまった。
下働きの女中が一人起上ったばかりの所だった。その喫驚した顔付へ、久保田さんは自分でも少しおかしいほど軽い気持で、黙っておれと相図しておいて、冷い水で顔を洗い、禿げかかった半白の髪を丁寧に撫でつけ、先刻の月影がまだ残っている頭を、不思議そうに打振りながら、座敷の縁側を開けて庭に出てみた。