Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんはんえい
人間繁栄
豊島 与志雄
Lesen Sie 人間繁栄 (にんげんはんえい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.038 Zeichen · 38 Bildschirme
するとね、二人の間に、子供がすやすや眠ってるじゃないか。眼の前がほんとに真暗になって、それからもう何もかも夢中さ。出刄庖丁を投り出して、わっと喚き立てて、子供を引ったくって、外に飛出したまでは覚えてるが、あの二人がどうしたか、子供がどうしたか、ちっとも頭に残ってないよ。私はその晩中、子供を抱いてうろついたせいか、子供が風邪を引いて、翌日からひどく熱が出てね、もう駄目かと思ったよ。」――それから男は、相手の女と出奔してしまって、何等の消息もなかったが、横浜から不意に人を寄来して、子供をくれと云って来た。――「あの女は屹度悪い病気を持ってるんだよ。それで子供が出来ないものだから、この子をふんだくろうとしてるのさ。」
彼女は話し止めて、膝の子供の頭に頬をすりつけたが、子供がむずむずと動き出すと、いきなり胸をはだけて、乳房を子供の口に含ました。血管が一つ一つ透いて見えるほど、むっちりと張り切った大きな乳房で、子供はそれを、筋目の深くくくれた蝋細工のような片手で、やんわりと持ち添えながら、息もつかずに、咽せ返るほどぐっぐっと飲み下していった。冴えきった冷い月の光が、斜め上から降るように落ちていて、その乳房と手と子供の赤い頬辺とに、蒼白い艶を投げかけていた。