Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんはんえい
人間繁栄
豊島 与志雄
Lesen Sie 人間繁栄 (にんげんはんえい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.038 Zeichen · 38 Bildschirme
薄すらとかすんだ生温い朝日の光が、植込の新緑の上に一面に降り注いでいた。
「俺はもう愛とか恋とか、そういったものをいつのまにか失ってしまった。今になって取返しはつかない。夫婦の愛情さえももう味えそうにない。俺の生活はどんよりとしてる。然し……。」
彼は両腕の中に冬子をとんとんとやって、その円っこいずっしりとした重みを測った。
女中が冬子を探しに来た。幼稚園へ出かけなければならない時間だった。
「転ばないように大事に連れて行くんだよ。」
そして彼は妻の方へやって行った。
八重子は蒼白い顔をなお蒼ざめさして、力尽きたようにがっかりした様子で、それでもきちんと端坐していた。彼の姿を見ると眼を外らした。彼は何気ない風で云ってみた。
「お前はどこか身体でも悪いんじゃないのか。もし何なら、医者に診て貰ったらどうだい。」
「それには及びませんわ。」
「それなら、温泉にでも出かけてみるがいいよ。俺も一二週間保養をしてみたいから、急な用を片付け次第、一緒に行こうよ。よかったら……、」そして彼は一寸唇を歪めた、「戸倉にでも行ってみようか。」
「ええ。」と彼女は上の空で返辞をした。