Japanische Klassiker mit Furigana
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じんめんそうものがたり
人面瘡物語
田中 貢太郎
Lesen Sie 人面瘡物語 (じんめんそうものがたり) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.114 Zeichen · 10 Bildschirme
「今日は思いがけない饗応に預りまして、ありがとうございます」
八郎が酒にほてった顔を見せると、病人は心持ち好さそうにして、
「見らるるとおりの山家でござるから、何も客人の御口に叶うものが無くて気の毒じゃ」と、云って傍にいる家臣に注意するようにして、「では、これから拙者の身のうえを話して聞かそうほどに、皆の者は遠慮するが好い」
八郎を送って来ていた二人の家臣は室を出て往った。病人はそれを見ると体をちょっと動かして微笑した。病人は夜着のようなものを羽織っていた。
「拙者の名と藩の名とは、聞いてくださるな、また聞いたとて、其処許には興味も何も無いことじゃから、それは聞いてくださるな、名が欲しければ、山中猿右衛門とでも、鹿五郎とでも、其処は其処許の想像に任するじゃて」と、病人はまた微笑して、「其の時は、拙者も二十歳ばかりで、家には祖先の手柄によって頂戴している高禄があり、それに主君の覚えも目出度いと云うので、同家中の者からは、羨まれる地位でござったが、前世の約束ごととでも云おうか、ふと、我家の召使に眼がつくようになったのじゃ、それは何でも非番の日で、拙者は終日己の居間で、草双紙などを読んでいた。