Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にんぎょ

人魚

火野 葦平

Lesen Sie 人魚 (にんぎょ) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.457 Zeichen · 15 Bildschirme

Aozora Bunko

わたしたちが必要に応じて姿を消すことのできることは、あなたも御承知のことと存じます。わたしは姿を消すと、人魚にちかづいてゆき、波のなかにもぐりました。

人魚はそういうことは知りませんから、前とすこしもかわらずに、うねりにつれて波のうえをただよい、やがてなにか歌をうたいはじめました。その声はあまり高くはありませんでしたが、風鈴が風にそよぐようにすずしい声で、波のうえをながれてゆきます。高くひくく抑揚をつけてうたうのですが、もとよりわたしは歌の意味などわかるはずもありません。ただそのたえいるようなしらべにうっとりとなるばかりです。水中にもぐって人魚のまわりをめぐっていますと、うたうたびにかすかに胸がふくらんだりちぢんだりし、二つの乳房が息をしているようにふるえます。腰から下は鱸によく似たこまかい鱗におおわれ、そのびいどろのようないろの鱗は一枚々々みがかれたようにつやつやしく、うごくたびにきらっきらっと光ります。扇がたにひろがった尾は梶をとるようにものやわらかにくねり、ときにはげしくうごいて人魚のからだを急激に推進させます。ときに人魚のからだは夕焼雲のいろを吸いとるようにうす紅にそまり、人魚がもぐりますと、長い黒髪が水中にみだれよって、昆布がゆらぐように妖しいうごきかたをします。