Japanische Klassiker mit Furigana
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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
Lesen Sie 仇討三態 (あだうちさんたい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.136 Zeichen · 33 Bildschirme
死んだ者は、紛れもなく和田直之進であった。
弟は、最初それを容易には信ずることができなかった。自分たちに発見されたのを気づいたために、自分たちを欺こうとする敵の謀計ではないかと思った。が、弔問の客の顔にも、近隣の人々の振舞にも、死者を悼む心がありありと動いていた。直之進の死を疑う余地は、少しも残っていなかった。
兄弟は、その夜三条小橋の宿屋で、相擁して慟哭した。短気でわがままな兄は、弟が見つけたときに、なぜ即座に打ち果さなかったかを責めた。が、その叱責が無理であることは、叱責している兄自身がよく分かっていた。兄は、切腹する切腹すると叫びながら、幾度も短剣を逆手に持った。そのたびに温厚な弟が制した。果ては、兄弟が手をとって慟哭した。彼らの慟哭は、夜明けまでも続いた。
八年の辛苦が、ことごとく水泡に帰した。張りつめた気が、一時に抜けた。兄弟は、うつけ者のごとく、ただ茫然として数日を過した。
弟が、ようやく兄を慰めて、郷里の新発田へ帰って来た。弟は、京都を立つ前、ひそかに所司代へ願い出て、敵直之進が、横死した旨の書状を貰った。
兄弟の家は、八百石を取って、側用人を務むる家柄であった。