Japanische Klassiker mit Furigana
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あだうちさんたい
仇討三態
菊池 寛
Lesen Sie 仇討三態 (あだうちさんたい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.136 Zeichen · 33 Bildschirme
敵をおめおめと死なせた上に、あられもない悪評の的になっているのじゃ」
忠次郎は、声こそ出さないが、男泣きに泣いた。
幸太郎は、それを制するようにいった。力強くいった。
「何を仰せらるるのじゃ。一旦、敵を持った者に幸せな者がござろうか。御身様などは、まだいい。御身様は、物心ついた七歳の時から四十七歳の今日まで、人間の定命を敵討ばかりに過した者の悲しみを御存じないのじゃ」
そういったかと思うと、三十年間の櫛風沐雨で、銅のように焼け爛れた幸太郎の双頬を、大粒の涙が、ほろりほろりと流れた。
忠次郎の傷ついた胸が、温かい手でさっと撫でられたように一時に和んでいた。
二人は、目を見合わしたまま、しばらくは涙を流し合った。
その三
宝暦三年、正月五日の夜のことである。
江戸牛込二十騎町の旗本鳥居孫太夫の家では、お正月の吉例として、奉公人一統にも、祝酒が下された。
ことに、旧臘十二月に、主人の孫太夫は、新たにお小姓組頭に取り立てられていた。二十一になった奥方のおさち殿が、この頃になって、初めて懐胎されたことが分かった。
慶びが重なったので、家中がひとしお春めいた。