Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうとう
偸盗
Lesen Sie 偸盗 (ちゅうとう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.934 Zeichen · 97 Bildschirme
板葺、檜皮葺の屋根の向こうに、むらがっているひでり雲も、さっきから、凝然と、金銀銅鉄を熔かしたまま、小ゆるぎをするけしきはない。まして、両側に建て続いた家々は、いずれもしんと静まり返って、その板蔀や蒲簾の後ろでは、町じゅうの人がことごとく、死に絶えてしまったかとさえ疑われる。――
猪熊のばばの言ったように、沙金を次郎に奪われるという恐れは、ようやく目の前に迫って来た。あの女が、――現在養父にさえ、身を任せたあの女が、あばたのある、片目の、醜いおれを、日にこそ焼けているが目鼻立ちの整った、若い弟に見かえるのは、もとよりなんの不思議もない。おれは、ただ、次郎が、――子供の時から、おれを慕ってくれたあの次郎が、おれの心もちを察してくれて、よしや沙金のほうから手を出してもその誘惑に乗らないだけの、慎みを持ってくれる事と、いちずに信じ切っていた。が、今になって考えれば、それは、弟を買いかぶった、虫のいい量見に過ぎなかった。いや、弟を見上げすぎたというよりも、沙金のみだらな媚びのたくみを、見下げすぎた誤りだった。ひとり次郎ばかりではない。あの女のまなざし一つで、身を滅ぼした男の数は、この炎天にひるがえる燕の数よりも、たくさんある。