Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうとう
偸盗
Lesen Sie 偸盗 (ちゅうとう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.934 Zeichen · 97 Bildschirme
が、自分は、あの女に会うたびに、始終兄にすまないと思っている。別して、会ったのちのさびしい心もちでは、よく兄がいとしくなって、人知れない涙もこぼしこぼしした。現に、一度なぞは、このまま、兄にも沙金にも別れて、東国へでも下ろうとさえ、思った事がある。そうしたら、兄も自分を憎まなくなるだろうし、自分も沙金を忘れられるだろう。そう思って、よそながら暇ごいをするつもりで、兄の所へ会いにゆくと、兄はいつも、そっけなく、自分をあしらった。そうして、沙金に会うと、――今度は自分が、せっかくの決心を忘れてしまう。が、そのたびに、自分はどのくらい、自分自身を責めた事であろう。
しかし、兄には、自分のこの苦しみがわからない。ただいちずに、自分を、恋の敵だと思っている。自分は、兄にののしられてもいい。顔につばきされてもいい。あるいは場合によっては、殺されてもいい。が、自分が、どのくらい自分の不義を憎んでいるか、どのくらい兄に同情しているか、それだけは、察していてもらいたい。その上でならば、どんな死にざまをするにしても、兄の手にかかれば、本望だ。いや、むしろ、このごろの苦しみよりは、一思いに死んだほうが、どのくらいしあわせだかわからない。