Japanische Klassiker mit Furigana
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ちゅうとう
偸盗
Lesen Sie 偸盗 (ちゅうとう) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.934 Zeichen · 97 Bildschirme
犬は、新しい餌食を見ると、一瞬のいとまもなく、あらしに吹かれて飛ぶ稲穂のように、八方から次郎へ飛びかかった。たくましい黒犬が、太刀の上をおどり越えると、尾のない狐に似た犬が、後ろから来て、肩をかすめる。血にぬれた口ひげが、ひやりと頬にさわったかと思うと、砂だらけな足の毛が、斜めに眉の間をなでた。切ろうにも突こうにも、どれと相手を定める事ができない。前を見ても、後ろを見ても、ただ、青くかがやいている目と、絶えずあえいでいる口とがあるばかり、しかもその目とその口が、数限りもなく、道をうずめて、ひしひしと足もとに迫って来る。――次郎は、太刀を回しながら、急に、猪熊のばばの話を思い出した。「どうせ死ぬのなら一思いに死んだほうがいい。」彼は、そう心に叫んで、いさぎよく目をつぶったが、喉をかもうとする犬の息が、暖かく顔へかかると、思わずまた、目をあいて、横なぐりに太刀をふるった。何度それを繰り返したか、わからない。しかし、そのうちに、腕の力が、次第に衰えて来たのであろう、打つ太刀が、一太刀ごとに重くなった。今では踏む足さえ危うくなった。そこへ、切った犬の数よりも、はるかに多い野犬の群れが、あるいは芒原の向こうから、あるいは築土のこわれをぬけて、続々として、つどって来る。