Japanische Klassiker mit Furigana
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びぜんめいきゅうでん
備前名弓伝
山本 周五郎
Lesen Sie 備前名弓伝 (びぜんめいきゅうでん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.649 Zeichen · 50 Bildschirme
城の北方、二番町のはずれと思われるあたりに黒煙があがっている、幸い風のない日のことで、煙はまっすぐに昇っているが、やがてちらちらと棟を嘗める炎が見えだした。
「まだ町奉行から知らせはないか」「はっ」お側の一人が駈け下りていった。するとほとんど入れ違いに青地三之丞が登ってきた。よほど急いで来たと見えて、汗が衣服の表まで滲んでいる。「申上げます」
「おお三之丞か、許す、近う」「御免!」つつっと膝行したが、
「御城下二番町より失火をいたしました」「いま見ておる、誰の屋敷じゃ」「それを申上げますまえに、恐れながらお人払いをねがいます」「人払い」火事の報告をするのに人払いとは妙なことを云うと思った。しかしすぐにお側の者を下げて、
「申せ、なにごとだ」「恐れながら、火を出しましたるは滝川幸之進の家にございます」「なに幸之進の家とな」「まことに偶然のめぐりあわせでございますが、わたくしが彼の屋敷の門前を通りかかりますると、裏門が閉ざしてあり、その前に夥しく人立がしておりました。近寄ってみますると……かようなものが、表扉にぴたりと貼り付けてござりました」そう云いながら、三之丞は懐中から折りたたんだ一枚の紙片を取ってうち払い、そっとすり寄って差出した。