Japanische Klassiker mit Furigana
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びぜんてんいちぼう
備前天一坊
江見 水蔭
Lesen Sie 備前天一坊 (びぜんてんいちぼう) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.511 Zeichen · 25 Bildschirme
猶まだ動きの取れぬ証拠としては、御墨付同様の書類もあるとやら。素よりこの儀造り事ならば、御殿様の御心に御覚えのあろう筈がないで、直ぐ様騙り者と召捕られて、磔にもなるは必定。そんな危い瀬を渡る為にわざわざ三人で来られる気遣いはなく、まぎれもない正物とは、わしにさえ鑑定が出来るのじゃ」
「やれ、嬉しや、福の神じゃ」
お幸と来ては亭主以上の欲張り女。
「そこで、それ、今の内に、娘のお綾をな」
「合点で御座んす」
気が早い。欲に掛けては呑込の好い事夥しいのであった。
こうした欲張二人の間に、どうして美しいお綾という娘が出来たろうか。イヤそれは出来る訳がないので、実は宿に泊った西国巡礼夫婦から金に替えて貰ったので、この娘を看板に何か金儲けと考えていたのが、今度初めて役に立った訳。
「したがこの事は、娘の耳にも入れて置いた方が宜しかろう」
「それもそうじゃの」
この事を母のお幸から、密と娘お綾の耳に入れた。そうして。
「お前の出世にもなる事だから、必らず金三郎様の御意に逆らわぬように、何事でも素直にお受けして、好いかえ」
ところが、このお綾には既に人知れず言交した人があるのであった。