Japanische Klassiker mit Furigana
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びぜんてんいちぼう
備前天一坊
江見 水蔭
Lesen Sie 備前天一坊 (びぜんてんいちぼう) von 江見 水蔭 (えみすいいん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.511 Zeichen · 25 Bildschirme
突然智栄尼が腹痛に苦しみ出した。
「こりや、毒、毒殺じゃ。毒殺じゃ」
宿の者はびっくりした。
第一に駈着けたのが医師の俊良。
「なに毒殺なんどと、その様な事があるものか。正しく物中で、直きに治る。さ、さ、この薬を一服」
何やら、粉薬を出して、苦しむ智栄尼の口中に割り込んだ。
しかし、その薬を服んでからは一層苦しみを重ねて、唸り声は立てても言語をする事は出来なくなった。終には血嘔を吐いて悶え死に死んで了った。
半田屋九兵衛夫婦も共に蒼くなった。宿泊者から変死者を出したとあっては、事がはなはだ面倒だからであった。
それは毒殺? とすればいよいよ掛り合。無論医師の俊良が、秘密を保つ為に一服盛ったなとは略推察は出来るのであったが、それもしかし金三郎と娘お綾との結婚の為には、邪魔が払えた勘定でもあるので、これは絶対に秘密にという小人の奸智。
「俊良様、御掛り合で、重々御迷惑とは存じまするが。それ、な、決して、その、毒死ではない、物中の為め頓死で御座りましょうで、御手数ながらその御見立を一札どうぞ」
「や、心得て御座る。決してこれは毒死では御座らぬ。これは医師の立場からして、拙老がどこまでも保証仕るで、御心配には及ばぬ事じゃ」