Japanische Klassiker mit Furigana
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きずあとのはいけい
傷痕の背景
豊島 与志雄
Lesen Sie 傷痕の背景 (きずあとのはいけい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.022 Zeichen · 38 Bildschirme
杉本は出来るだけ、当らず触らずの返事をする。話が、夭折した杉本の父親のことに及ぶ。豪い男だった、と田代さんは云う。君も父の子だ……と。どうにか生活出来るか……と。酒がうまそうである……。年齢の渋みのかかった艶のいい皮膚、半白の髪、毛の長い眉、底の見透せぬ老成した眼付、意志の頑強そうな口元……。そして、それを包んで、好々爺らしい鷹揚な態度……。酒がうまそうである。が杉本は、酒がうまくない。鼻のつんと高い、怜悧な、勝気な、痩せた夫人から、一挙一動を見て取られる、という意識ばかりではない。話が、杉本の身辺のこと以外に、一歩も出ないのである。学費を無条件で支給してくれたばかりでなく、卒業後のことは全く放任してくれてる。有難い恩人ではあるが……。
――俺はただ、この人にとっては、酒の肴になるだけのことだ。俺がこうして、御機嫌をとってるそのことが、俺の精神にどれだけの犠牲を要求するか。俺が貰った学費が、この人の富に、どれだけの犠牲を要求したか。両者のパーセンテージは……。恩義は、与える方では、与えることの享楽で償われ、受ける方では、受けることの感謝で払われてる筈だ。