Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくのこどくへきについて
僕の孤独癖について
萩原 朔太郎
Lesen Sie 僕の孤独癖について (ぼくのこどくへきについて) von 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.918 Zeichen · 10 Bildschirme
例えば町へ行こうとして家を出る時、反対の森の方へ行ってるのである。最も苦しいのは、これが友人との交際に於いて出る場合である。例えば僕は目前に居る一人の男を愛している。僕の心の中では固くその人物と握手をし、「私の愛する親友!」と云おうとして居る。然るにその瞬間、不意に例の反対衝動が起って来る。そして逆に、「この馬鹿野郎!」と罵る言葉が、不意に口をついて出て来るのである。しかもこの衝動は、避けがたく抑えることが出来ないのである。
この不思議な厭な病気ほど、僕を苦しめたものはない。僕は二十八歳の時に、初めてドストイェフスキイの小説『白痴』をよんで吃驚した。というのは、その小説の主人公である白痴の貴族が、丁度その僕と同じ精神変質者であったからだ。白痴の主人公は、愛情の昂奮に駆られた時、不意に対手の頭を擲ろうとする衝動が起り、抑えることが出来ないで苦しむのである。それを初めて読んだ時、まさしくこれは僕のことを書いたのだと思ったほどだ。僕は少年時代に黒岩涙香やコナン・ドイルの探偵小説を愛読し、やや長じて後は、主としてポオとドストイェフスキイを愛読したが、つまり僕の遺伝的な天性気質が、こうした作家たちの変質性に類似を見付けた為なのだろう。