Japanische Klassiker mit Furigana
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ひかりのないあさ
光のない朝
宮本 百合子
Lesen Sie 光のない朝 (ひかりのないあさ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.418 Zeichen · 11 Bildschirme
父親はいても、互に生き写しな気弱さや生活上の無気力で、どちらも頼りにはならなかった。その上、おもんの稚い心には、人生の恐ろしさが烙印のように銘された。小さい、臆病な黒い二つの眼は、朧(おぼろ)げながら、平凡な日常生活を包む見えない幕が一旦掲げられると、底からどんな恐ろしい転変が顕(あらわ)れるか、忘れられない深い印象を以て見たのである。
死んだおもんの母親は、彼女に二人の同胞を与える筈であった。けれども、彼等は皆夭折(ようせつ)した。このことは、おもんにとっての大きな不幸であったが、父の真吉には、先ず好都合というべきものになった。
半年ばかり経つと、彼は同僚の世話で二度目の妻を迎えた。激しい嫉妬深い気象を持ったおまきは、瞬くうちに家庭の主権者として、良人に命令を与える地位に立った。当然おもんは、最も従順な奴隷とならずには置かれない。新しい母にとって些かも邪魔にならず、しかも必要な場合には、時を移さず用を果す静かな、家畜のような生活が、彼女の日々を満たした。歿(な)くなった母親はおっかさんと呼んだのに、今度の母は却って叮嚀(ていねい)におかあさんと呼ぶ、その理由だけが、おもんの、父にも知らさない心の秘密なのであった。