Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
「そうだそうだ!」
と叫ぶ声が集まった窩人の口々から雷のように轟いた。
「さて」と一段声を高め杉右衛門はさらに云い出そうとしたが、にわかに棒のように立ちすくみ山の峰の方を見詰め出した。群がった窩人達は怪しみながら彼の眼を追って峰の方を見た。と同音に「わっ!」と叫び大事な評定も忘れたかのように四方に向かって逃げ出した。
峰は今や山火事なのである。
涸れ乾いた木の葉に火が点いたのである。濛々たる黒煙のその中から焔の舌が閃いて見え嵐に煽られて次第次第に火勢は麓の方へ流れて来る。
窩人の部落は今やまさに焼き払われようとしているのである。
六
窩人の頭領杉右衛門の娘の今年十九の山吹は家の一間で泣いていた。
父は寄り合いに出かけて行き弟の牛丸もどこへ行ったものか家の内にはいなかった。
彼女は泣き喋舌っているのであった。
「あの人憤って行ってしまったわ。どうしよう、どうしよう、どうしよう! よくまだ妾が云わないうちにあの人憤って行ってしまったんだもの。そりゃ妾だって悪かったけれどあの人だってあんまりだわ。……でも妾ほんとにあんな事を何故あの人に云ったんだろう。