Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

茴香の花が咲いているのだ。そうしてもしも俺が死んだら、その茴香の肥料になるのだ。……死! 肥料! 恐ろしいことだ! これはどうしても逃げなければならない。だがどうしたら逃げられるのか? そうだ土を刎ね退ければいい。だがどうして刎ね退けたものか? 重い厚い石のように、一面に冠さっているではないか? 駄目だ駄目だ! 助かりっこはない。……前田氏! 一学氏! 助けてくだされ、助けてくだされ!」

しかし、四辺は森閑として、ただ暗く寒かった。

「せめて手だけでも動かせないかしら?」

彼は右手を動かそうとした。土が重く冠さっていた。容易に動かすことは出来なかった。しかし非常な努力の後、それでも少しずつ動かせるようになった。

「よし。有難い。大丈夫だ」

で、土を掻き退けようとした。すると指先に何かさわった。石ではない固いものであった。そこでそれを引っ掴んだ。その感触が鉄らしかった。しかもそれは環のようであった。

「鉄の環があろうとは、これはいったいどうしたことだ?」葉之助には不思議であった。

溺れる者は藁をも掴む。で、葉之助は環を掴み、力まかせに引いてみた。

その瞬間に起こったことは、彼にとっては奇蹟よりも、もっと驚くべきことであった。