Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

「はい、どうやらそんなようで」

「ここで白粉が蹴散らされている」

「以前にも一度ありました」

「こいつの所業に相違ない」

「莫迦な奴だ、眠っております」

「いったいこいつ何者であろう?」

そこで町人は覗き込んだ。

「おっ、これは葉之助殿だ!」

「何、葉之助? 鏡葉之助か?」

「はい、帯刀様、さようでございます」

「そうか」

と武士は腕を組んだ。

「鏡葉之助とあってみれば斬ってすてることも出来ないな」

「とんでもないことで。それは出来ません」

「と云って捨てては置かれない」

「私に妙案がございます」

町人は武士の耳の辺で、何かヒソヒソと囁いた。

「うむ、こいつは妙案だ」

「では」と云うと町人は、懐中へスッと手を入れた。取り出したのは白布であった。それを葉之助の顔へ掛けた。

しばらく二人は見詰めていた。

「もうよろしゅうございましょう」

町人はこう云うと白布を取った。それから葉之助を抱き上げた。葉之助は死んだように他愛がなかった。

武士が葉之助の頭を抱え、町人が葉之助の足を持った。

森帯刀の屋敷の方へ、二人はソロソロと歩いて行った。上野の山に遮られて、火事の光も見えなかった。根岸一帯は寝静まっていた。