Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

汗が滲んで来たからである。その筈である。彼の家族は彼と母親との二人きりなのだから。

「ああ、駄目だわ! 妾なんか!」

突然絶望の声を上げ、山吹が両眼を抑えたので多四郎はギョッとして腰を浮かせたが、何が駄目なのか解らない。

「ああ、妾なんか及ばないわ!」

再び彼女は叫んだものである。

「及ばない? 何が? どうしてですな?」

云いながら好機逸すべからずと彼は山吹の手をとった。それからそっと腰をかける。

山吹も今度はとられた手を振り放そうとはしなかった。じっとそのままとらせている。

「でもやっぱり行きたいわ。……」

囈語のようにこう云って彼女は多四郎の顔を見たが、

「あなたはどういうご身分のお方? お侍さんではありませんわねえ」

「違いますとも。そうではありませんとも」

「では、お百姓? ああ商人ね! 大きな大きな商人ね! でもどうしてそんなお方が行商などをなさいますの?」

「さあ、そこです。……」

と、多四郎は、また額を磨ったが、

「つまり、見習いをしているので。……」

「ああそう、それで解りました」

山吹はそこで押し黙って何か空想にふけり出した。と、多四郎は彼女の手を自分の口まで持って来てつと唇を着けようとする。