Japanische Klassiker mit Furigana
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme
葉之助は立ち上がった。
まず正面へ歩いて行った。そこには正しく床の間があった。ズッと右手へ歩いて行った。と、手先に襖がさわった。それをソロソロと引き開けた。出た所に廊下があった。その廊下を左手へ進んだ。幾個かの部屋が並んでいた。と、丁字形の廊下となった。網を掛けた雪洞があった。
「大名か旗本の下屋敷だな」
葉之助は直覚した。
廊下の行き詰まりに庭があった。で、庭へ下りて行った。植え込みが隙間なく植えてあった。それを潜って忍びやかに歩いた。
深夜と見えて人気がなかった。時々鼾の声がした。
黒板塀がかかっていた。その根もとに蹲まり、二人の人間が囁き合っていた。
葉之助は素早く身を隠した。二人の話を聞こうとした。
間が遠くて聞こえなかった。で、植え込みの間を潜り、ソロソロと二人へ近寄った。月が二人の真上にあった。二人の姿は朦朧と見えた。二人ながら覆面をし、目立たない衣裳を纏っていた。一人は大小を差していた。しかし一人は丸腰であった。
断片的に話し声が聞こえた。
「……恐らく今夜は邪魔はあるまい」
武士の方がこう云った。
「……今夜は大丈夫でございましょう」