Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

後には、部屋の中には誰もいない。黄色い秋陽がしらしらと敷物の上を照らしている。小鳥が一羽戸惑いしてツト部屋の中へ飛び込んで来たが、すぐ驚いたように飛び出して行った。しんと四辺は静かである。

と、戸外で話し声がする。

「牛丸さん、今日は」

「ああ、岩さん、今日は」

「姉さん家においでかね?」

「ええいますよ家の中に」

「どなたかお客さんでもありますか?」

「…………」

「とにかくはいって見ましょうかね」

すぐと土間へはいって来たのは、牛丸と岩太郎と白衣を着たすなわち「妙な人」とであった。

岩太郎は多四郎と同年輩であった。人柄はまるで反対であった。真面目で熱烈で堅実でいかにも部落の若者らしい。縞の筒袖に山袴を穿き獣皮の帯を締めている。

白衣の人物はそれとは異なり真に神のように神々しい。抜けるほど白い皮膚の色。髪を肩まで切り下げているのがかえって一種の尊厳を添える。白衣を長く裳まで垂れ足の先を隠しているが、その足には何んにも穿いていない。秀でた額、高い鼻。形のよい口には微笑が湛えられ一見赤児さえ懐きそうである。彼の眼は全く不思議なものである。つまり威厳の象徴であって、ある時は玲瓏珠の如くに見え、ある時は猛獣をも尻ごみさせるほどの恐ろしい眼にも見えるのであった。