Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

窩人部落にいた頃から彼女と獣達とは仲がよかったが、この木小屋へ来てからは一層両者は仲良くなり、多四郎の留守を窺っては彼らは遊びに来るのであった。

その夜一晩待ったけれど多四郎は帰って来なかった。

翌る朝、彼女は小屋を出てそれとなくあっちこっち探してみたが恋しい良人の姿は見えない。声を上げて呼んでも見たが答えるものは嵐ばかりだ。やがて夜がやって来た。夜中彼女は待ってみたがやはり帰って来なかった。また味気ない夜が明ける。朝の日光が射して来た。で、彼女は小屋を出て雪の高原を彷徨いながら狂人のように探してみたが結果は昨日と同じであった。で、また寂しい夜となる。……

夜が日に次ぎ日が夜につづき、恐怖、不安、疑惑、憤怒、嫉妬の月日が経って行った。

春がおとずれ初夏が来た。山の雪はおおかた消え欝々たる緑が峰に谷に陽に輝きながら萌えるようになった。辛夷、卯の花が木の間に見え山桜の花が咲くようになった。鶯の声、駒鳥の声が藪の中から聞こえて来る。

山吹はこの頃懐妊っていた。多四郎の種を宿していたのだ。

彼女はようやくこの頃になって、自分が多四郎に捨てられたことをはっきり心に悟るようになった。