Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やつがたけのまじん

八ヶ嶽の魔神

国枝 史郎

Lesen Sie 八ヶ嶽の魔神 (やつがたけのまじん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.664 Zeichen · 323 Bildschirme

Aozora Bunko

と見ると遥かの山の峰に何やら動くものがある。そうしてそこから風に伝わってこういう声が聞こえて来た。

「おさらばじゃ岩太郎! またお前達とも逢うだろう。それまではおさらばじゃ」

「ああ、あれが白法師様だ」

岩太郎は呟いて岩の上から幾度も頭を下げたものである。

二二

宗介天狗のご神体が無慙に傷つけられ穢されたことは、笹の平の窩人達にとっては正に青天の霹靂であり形容も出来ない恐怖であった。白法師さえ取り逃がしたので、彼らはすっかり絶望した。絶望に次いで混乱が来た。平和であった窩人部落は一朝にして土崩瓦壊した。

十人二十人組を組んで笹の平を去る者が出来た。「黄金の甲冑を取り戻すまでは俺達はここへは帰って来まい」――「黄金の甲冑を探しに行こう。日本の国の隅々隈々を、幾年かかろうと関わない。探して探して探して廻ろう」

こう云って彼らは出て行くのであった。

一月二月と経つうちに笹の平の窩人の数はわずか二百人となってしまった。こうして秋が去り冬が来た頃には、笹の平は無人境となった。最後に残った二百人を杉右衛門自ら引卒れて放浪の旅へ登ったからである。

天狗の宮には祀る者がなく窩人の住家には住む者がなく、従来賑やかであっただけにこうなった今はかえって寂しく蕭殺の気さえ漂うのであった。