Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅっせ
出世
菊池 寛
Lesen Sie 出世 (しゅっせ) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.840 Zeichen · 18 Bildschirme
「どうしたんだ? 札をくれないか」と、譲吉は少しむっとしたので、荒っぽくいった。
「いや分かっています」と、大男はいかにも飲み込んだように、首を下げて見せた。
「君の方で分かっていようがいまいが、札をくれるのが規則だろう」
「いや間違えやしません。あなたの顔は知っています」
「知っていようがいまいが問題じゃない。札をくれたまえ。規則だろう」
「いくら規則でも、あんまりひどい草履ですね」と、彼は煙管を、火鉢の縁にやけに叩いた。
「人をばかにするな。何だと思うんだ。いくら汚くても履物は履物だぜ」譲吉は本当に憤慨していった。
「あなたの帽子が、どこの学校の帽子かぐらいは知っている。が、何も札をあげなくたって、間違わないというんだから、いいでしょう」と、爺はまだ頑強に抗弁した。譲吉は、自分の方に、十二分の理由があるのを信じたが、大男の足のすぐそばに置かれている自分の草履を見ると、どうもその理由を正当に主張する勇気までが砕けがちであった。下足に供えてある上草履のどれよりも、貧弱だった。先方から借りる上草履よりも、わるい草履を預けながら、下足札を要求する権利は、本当からいえば存在しないものかも知れなかった。