Japanische Klassiker mit Furigana
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しょとうのにっきから
初冬の日記から
寺田 寅彦
Lesen Sie 初冬の日記から (しょとうのにっきから) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.930 Zeichen · 20 Bildschirme
とにかくそこいらを歩いている普通十人並の娘達と同じような着物に、やはりありふれたようなショールを肩へかけて、髪は断髪を後ろへ引きつかねている。しかし白粉気のない顔の表情はどこかそこらの高等女学校生徒などと比べては年の割にふけて見えるのである。ほぼ同年頃の吾等の子供等と比べると眉宇の間にどことなしに浮世の波の反映らしいものがある。膝の上にはどうも西洋菓子の折らしい大きな紙包みを載せている。
聞くところによると、そのKという女優は、富豪の娘に生れ、当代の名優と云われるTKの弟子になってその芸名のイニシアルを貰い、花やかに売出したのであったが、財界の嵐で父なる富豪が没落の悲運に襲われたために、その令嬢なるKは今では自分の腕一つで働いて生活しているという話をファンの一人であるところのSから時々聞かされていたので、その話をこの青バスの中の目前の少女と結びつけて考えてみると、それですべてが無理なく説明されるような気がした。
二、三年前Sと大久保余丁町の友人Mを尋ねての帰りに電車通りへ出ると、そこの路地の入口に一台の立派な自動車が止まっていた。そこへ折から乗込む女を見るとそれが紛れもない有名な人気女優のMYであった。