Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わかれたるつまにおくるてがみ

別れたる妻に送る手紙

近松 秋江

Lesen Sie 別れたる妻に送る手紙 (わかれたるつまにおくるてがみ) von 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.985 Zeichen · 103 Bildschirme

Aozora Bunko

「あゝ。」と、私もそれに応ずるように返事した。

「じゃ屹度棄てない? ……屹度?」重ねて言った。

そう言われると、此方もつい釣込まれて、

「あゝ屹度棄てやしないよ。……僕より君の方が棄てないか?」と、言ったが、真実に腹から「棄てないで下さい!」と言うのならば、思い切って、何うかして下さい、とでも、も少し打明けて相談をし掛けないのであろうと、それを効なく思っていた。

そういうと、女は黙っていた。また以前の通り何処に心があるのやら分らなかった。するとまた暫く経って、「定ったらあなたに手紙を上げますから、そうしたら何うかして下さいな。」とそう言う。此度は此方で「うむ!」と気のない返事をした。

戸外は日が明るく照って、近所から、チーン、チーンと鍜冶の槌の音が強く耳に響いて来る。何処か少し遠い処で地を揺るような機械の音がする。今朝は何だか湿りっ気がない。

勘定が大分嵩んだろう。……斯う長く居るつもりではなかったから、固より持合せは少かった。私は突然に好い夢を破られた失望の感と共に、少しでも勘定が不足になるのが気になって、そうしていながらも、些とも面白くなかった。