Japanische Klassiker mit Furigana
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とねのしゃくあゆ
利根の尺鮎
佐藤 垢石
Lesen Sie 利根の尺鮎 (とねのしゃくあゆ) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.342 Zeichen · 13 Bildschirme
次は、後閑地先である。
月夜野橋を中心として、上下いずれにも無数に釣り場がある。鮎の姿が立派であるのと、艶の鮮やかであるのは、全川中後閑が第一等である。下総の銚子にある利根河口からここまでは、七、八十里もあろう。一寸か一寸五分に育った鮎が、太平洋の海水に別れるのは、三月初旬であるかも知れない。それが、長い長い旅路をへて、後閑まで達するには、もう夏の土用に入ろうとする七月中旬だ。
その旅の月日の間に、鮎はどんなに水や岩と闘ったか知れない。後閑地先へ足を止めたとき、鮎は頑健そのものになっている。身の上八、九寸、四、五十匁から百匁近くまで育っている。そして、野鯉のように細身で、筒胴の姿である。胴が筒と同じに細くなっていなければ、滝なす潺湍は乗り切れない。
肉がしまっている。香気が高い、背の色が濃藍だ。敏捷であるのと、体力的であるのと、闘争心の強いのと、強引であるのとは、あたかも密林に住む虎か豹にたとえられよう。
掛かった。釣り人は、まず足許に注意せねばならない。でないと、踏んだ石の水垢に辷ってでんぐり返る。囮鮎も、掛かり鮎も、竿もめちゃくちゃだ。足の速力が、鮎の逸走の速力に伴わねば、道糸を切られてしまうのである。