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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひみつ

刺青・秘密

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme

Aozora Bunko

周囲の物象があまりしーんとしているので、何だか恐ろしかったのでもあろう。うっかりしていると、自分もあの磯馴松や砂浜のように、じっとしたきり凍ったようになって、動けなくなるかも知れない。そうしてこの海岸の石と化して、何年も何年も、あの冷たい月光を頭から浴びていなければなるまい。実際今夜のような景色に遇うと、誰でもちょいと死んで見たくなる。この場で死ぬならば、死ぬと云う事がそんなに恐ろしくはないようになる。―――多分この考が、私を興奮させるのであったろう。

「隈ない月の光が天地に照り渡っている。そうしてその月に照される程の者は、悉く死んでいる。ただ私だけが生きているのだ。私だけが生きて動いているのだ」

そう云う気持が私を後から追い立てるようにした。追い立てられれば追い立てられるほど私はいよいよ急き込んで歩いた。すると今度は、私独りが急き込んでいると云う事が、それが恐怖の種になった。息切れがして苦しいので、ひょいと立ち止まると、否でも応でもあたりの景色が眼に這入って来る。総べての物は依然として閑寂に、空も水も遠い野山も、漂渺たる月の光に蕩け込んで、その青白い静かさと云ったら、活動写真のフイルムが中途で止まったようである。