Japanische Klassiker mit Furigana
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ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 刺青・秘密 (ひみつ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.935 Zeichen · 66 Bildschirme
私はそう云って、身を屈めて咳き入っている女の肩をさすってやった。
「お前は何が悲しいとお云いなのかい? こんな月夜にこうして外を歩いて居れば、誰でも悲しくなるじゃないか。お前だって心の中ではきっと悲しいに違いない」
「それはそうです。私も今夜は悲しくって仕様がないのです。ほんとうにどう云う訳でしょう」
「だからあの月を御覧と云うのさ。悲しいのは月のせいなのさ。―――お前もそんなに悲しいのなら、私と一緒に泣いておくれ。ね、後生だから泣いておくれ」
女の言葉はあの新内の流しにも劣らない、美しい音楽のように聞えた。不思議なことには、こんな工合に語りつづけている間にも、女は三味線の手を休めず弾いているのである。
「それじゃ小母さんも泣き顔を隠さないで、私の方を向いて下さい。私は小母さんの顔が見たいのです」
「ああそうだったね、泣き顔を隠したのはほんとに私が悪かったね。いい子だから堪忍しておくれよ」
空を仰いでいた女は、その時さっと頭を振り向けて、編笠を傾けながら私の方を覗き込んだ。
「さあ、私の顔を見たければとっくりと見るがいい。私はこの通り泣いているのだよ。私の頬ぺたはこんなに涙で濡れているのだよ。