Japanische Klassiker mit Furigana
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かご
加護
宮本 百合子
Lesen Sie 加護 (かご) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.147 Zeichen · 33 Bildschirme
お幾は、がらりと格子を開けた。見ると、上り框(かまち)に、真蒼な顔をしたお恵さんが、女中の腕に抱えられるようにして、腰かけている。鬢の毛をほつらせたまま、危うく首だけを延して、娘の手から、湯か水かを飲もうとしているところなのである。
「まあ! 奥様」
助かったというような女中の声と、
「どうなすったんですよ! まあ」
と云うお幾の言葉が、同時に二つの唇から迸った。
「お帰りになると、急に胸が苦しいとおっしゃいましてね」
「――息が迫って息が迫って……」
お恵さんは、コートを着たままの体を、物懶そうに起した。
「とにかく、こんな端近じゃあ仕方がない。さあ淑子さん」
お幾は、強いて快活に、怯えている娘を引立てた。
「この大きなおばさまが手伝ってあげるから、お母様をお部屋に入れてあげましょう」
急いで展べた床の上に、羽織も何も着たまま横になると、お恵さんは暫く、身動きもしなかった。
この天気のよい日に、彼女の額際から頬にかけては何ともいえず蒼ざめた寒い色が漂っている。薄い眉の下に、小さく寂しげに閉じた瞼の形、唇を微に開き、だんだんゆっくり深く呼吸し始めた友の胸の辺を、お幾は息を潜めて見守った。