Japanische Klassiker mit Furigana
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ばけいちょう
化銀杏
泉 鏡花
Lesen Sie 化銀杏 (ばけいちょう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.197 Zeichen · 54 Bildschirme
その茶の間の一方に長火鉢を据えて、背に竹細工の茶棚を控え、九谷焼、赤絵の茶碗、吸子など、体裁よく置きならべつ。うつむけにしたる二個の湯呑は、夫婦別々の好みにて、対にあらず。
細君は名をお貞と謂う、年紀は二十一なれど、二つばかり若やぎたるが、この長火鉢のむこうに坐れり。細面にして鼻筋通り、遠山の眉余り濃からず。生際少しあがりて、髪はやや薄けれども、色白くして口許緊り、上気性と見えて唇あれたり。ほの赤き瞼の重げに見ゆるが、泣はらしたるとは風情異り、たとえば炬燵に居眠りたるが、うっとりと覚めしもののごとく涼しき眼の中曇を帯びて、見るに俤晴やかならず、暗雲一帯眉宇をかすめて、渠は何をか物思える。
根上りに結いたる円髷の鬢頬に乱れて、下〆ばかり帯も〆めず、田舎の夏の風俗とて、素肌に紺縮の浴衣を纏いつ。あながち身だしなみの悪きにあらず。
教育のある婦人にあらねど、ものの本など好みて読めば、文書く術も拙からで、はた裁縫の業に長けたり。
他の遊芸は知らずと謂う、三味線はその好きの道にて、時ありては爪弾の、忍ぶ恋路の音を立つれど、夫は学校の教授たる、職務上の遠慮ありとて、公に弾くことを禁じたれば、留守の間を見計らい、細棹の塵を払いて、慎ましげに音〆をなすのみ。