Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちよこ

千世子

宮本 百合子

Lesen Sie 千世子 (ちよこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 83.104 Zeichen · 164 Bildschirme

Aozora Bunko

母親に小ごえで云って居た。

「おそく失礼ですけど、きのうあんまりよくないってでしたから今夜はよそに出かけたんですけど気になって御よりして見たんです。やっぱりいけないんですねエ、どうしたんでしょう、こんどよくなったら転地でもさせてあげなくっちゃあいけませんネ、今が一番大切な年だのに……」

「どうしたんでしょうかネエ、父様なんかそりゃあもう大変なんですよ、案じて。今馬鹿にするのはあんまり惜しいと云ってネエ」

「馬鹿になるなんて――そんな事は有りませんけど頭まく炎でも起すと悪うござんすネエ、頭ひやしてあげては?」

「それまでにしないでもいいでしょうがネエ」

フッと打たれた様にハッキリした千世子は背骨の一番頭に近いところがきりでもまれる様に痛むのを知った、脳膜炎の徴の一つだといつかだれかにきいたのを思い出しては身ぶるいをした。

目の前には、すっかり馬鹿になった自分が元の完全な頭だった時苦労して書いたもの、あつめたものを笑いながらやぶいて居る様子だの、夜着の衿をかみかみうめきながら死んで行く自分の心持を想像してどうしてもそれからのがれられないきまった時の様にボロボロ涙をこぼした。