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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちよこ

千世子

宮本 百合子

Lesen Sie 千世子 (ちよこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 83.104 Zeichen · 164 Bildschirme

Aozora Bunko

「色気がないネエ」

と云ったり、

「あれが東京の歩きっぷりなんさ」

と云ったりして居た。

そんな事にはもうなれて居る様にうつむきもしないで正面を見て歩いてどこまでも行った。すれ違う男達が一足か二足ぐらいひろくよけて通る事も千世子には、

「フフフフ」と笑いたい様な事だった。

ひろい店にずっと入るとすぐ大胆な目つきをして棚の上から台の上までの本を一通りズーと見廻す様子を、帳場に座って居た番頭は目を大きくしながら、

「入らっしゃいませ、どうぞ御ゆっくりと……」

とちった様な口っぷりをして居た。

その日は「その前夜」と「お絹」を買って帰った。

「東京より本が高い、ろくなものもないくせに」こんな事を道々考えて居た。

晩はまっくろい海が目の下に見えるベランダに出てあかるい電気の下で買って来た本をよみ始めた。

けれ共何となく囲りの気分とよんで居る本とがつり合わない様に思われてしかたがなかった千世子はわざわざサロメをとりかえてもって来た。

そうして電気を消した暗い中に自分の鼓動と海の鼓動とくだける波の白さと自分の顔の白さばかりがある中で、低い厳かな声で暗く強い鼓動を打って居る海の面に千世子は、Roll on, thou deep and dark blue Ocean―roll! と尊い詩の一節をなげてはてしもしれない様な冥想にふけっ