Japanische Klassiker mit Furigana
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せんねんのじさ
千年の時差
中谷 宇吉郎
Lesen Sie 千年の時差 (せんねんのじさ) von 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.756 Zeichen · 10 Bildschirme
そのほてりまでが、かぐわしくこの書の中には浮かび出ているのである。ここには幻影と実体との区別はない。そういう区別をすることが、即ち現代人の意識なのである。現代の文章、即ち現代人の頭のはたらきをもって、理性以前の人のこころを描くことは、物のにおいを油絵に描くほどの困難な仕事であるにちがいない。ところが『死者の書』はそういうことの可能性を示したもののように私には思われる。それが可能であったのは、表面は散文による小説の形をとっているが、実は全篇が優れた一つの長詩であるからであろう。折口氏の歴史的教養の深さと、民俗学的知識の透徹さとには、驚嘆すべきものがあるが、それだけで、読者に千年の昔の人のいぶきを感じさせることは出来ないであろう。それはきわめて優れた詩人にして、はじめて可能なことである。
『死者の書』が出てからは、もう十年あまりも経っていることであろう。私には現代の日本における最も優れた著作の一つと思われるこの書が、案外何処でもあまり話題に上らないことが、不思議でもあり、また不満でもあった。生意気ないい分であるかもしれないが、心から感服したのだから仕方がない。