Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
殆んど本能的に、最後の抵抗を試みんとするがごとくに見えた。
死地に牽かれて行く牡牛はむしろ冷静で、目には紫色のうるみを帯びていた。皆な立って眺めている中で獣医は彼方此方と牛の周囲を廻って歩きながら、皮をつまみ、咽喉を押え、角を叩きなどして、最後に尻尾を持上げて見た。
検査が済んだ。屠手は多勢寄って群って、声を励ましたり、叱ったりして、じッとそこに動かない牛を無理やりに屠場の方へ引き入れた。屠場は板敷で、丁度浴場の広い流し場のように造られてある。牛の油断を見すまして、屠手の一人は細引を前後の脚の間に投げた。それをぐッと引絞めると、牛は中心を保てない姿勢に成って、重い体躯を横倒しに板の間の上に倒れた。その前額のあたりを目がけて、例の大鉞の鋭い尖った鉄管を骨も砕けよとばかりに打ち込むものがあった。牛は目を廻し、足をバタバタさせて、鼻息も白く、幽かな呻き声を残して置いて気息も絶えんとした。
この南部牛のまだ気息の残ったのを取繞いて、屠手のあるものは尻尾を引き、あるものは細引を引張り、あるものは出刃でもって咽喉のあたりを切った。そのうちに多勢して、倒れた牛の上に乗って、茶色な腹の辺と言わず、背と言わず、とんとん踏みつけると、赤黒い血が切られた咽喉のところから流れ出した。