Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
辰さんは弟に命じて籾を箕に入れさせ、弟はそれを円い一斗桝に入れた。地主は腰を曲めながら、トボというものでその桝の上を丁寧に撫で量った。
「貴様入れろ、声掛けなくちゃ御年貢のようで無くて不可」と辰さんは弟に言った。「さあ、どっしり入れろ」
「一わたりよ、二わたりよ」と弟の呼ぶ声が起った。
六つばかりの俵がそこに並んだ。一俵に六斗三升の籾が量り入れられた。辰さんは桟俵を取って蓋をしたが、やがて俵の上に倚凭って地主と押問答を始めた。地主は辰さんの言うことを聞いて、目を細め、無言で考えていた。気の利いた弟は橋の向うへ走って行ったかと思ううちに、酒徳利を風呂敷包にして、頬を紅くし、すこし微笑みながら戻って来た。
「御年貢ですか、御目出度う」と言って入って来たのは水車小屋の亭主だ。
私は、藁仕事なぞの仕掛けてある物置小屋の方に邪魔にならないように居て、桟俵なぞを尻に敷きながら、この光景を眺めた。辰さんは俵に足を掛けて藁縄で三ところばかり縛っていた。弟も来てそれを手伝うと、乾いた縄は時々切れた。「俵を締るに縄が切れるようじゃ、まだ免状は覚束ないなア」と水車小屋の亭主も笑って見ていた。