Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
北向の屋根の軒先から垂下る氷柱は二尺、三尺に及ぶ。身を包んで屋外を歩いていると気息がかかって外套の襟の白くなるのを見る。こういう中で元気の好いのは屋根の上を飛ぶ雀と雪の中をあさり歩く犬とのみだ。
草木のことを言えば、福寿草を小鉢に植えて床の間に置いたところが、蕾の黄ばんで来る頃から寒さが強くなって、暖い日は起き、寒い日は倒れ萎れる有様である。驚くべきは南天だ。花瓶の中の水は凍りつめているのに、買って挿した南天の実は赤々と垂下って葉も青く水気を失わず、活々と変るところが無い。
君は牛乳の凍ったのを見たことがあるまい。淡い緑色を帯びて、乳らしい香もなくなる。ここでは鶏卵も氷る。それを割れば白味も黄身もザクザクに成っている。台処の流許に流れる水は皆な凍り着く。葱の根、茶滓まで凍り着く。明窓へ薄日の射して来た頃、出刃包丁か何かで流許の氷をかんかんと打割るというは暖い国では見られない図だ。夜を越した手桶の水は、朝に成って見ると半分は氷だ。それを日にあて、氷を叩き落し、それから水を汲入れるという始末だ。沢庵も、菜漬も皆な凍って、噛めばザクザク音がする。時には漬物まで湯ですすがねばならぬ。