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Japanische Klassiker mit Furigana

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ちくまがわのスケッチ

千曲川のスケッチ

島崎 藤村

Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme

Aozora Bunko

私達は――三人の同僚を除いては、皆な旅の鳥で、その中でも学士は幾多の辛酸を嘗め尽して来たような人である。服装なぞに極く関わない、授業に熱心な人で、どうかすると白墨で汚れた古洋服を碌に払わずに着ているという風だから、最初のうちは町の人からも疎んぜられた。服装と月給とで人間の価値を定めたがるのは、普通一般の人の相場だ。しかし生徒の父兄達も、次第に学士の親切な、正直な、尊い性質を認めないわけに行かなかった。これ程何もかも外部へ露出した人を、私もあまり見たことが無い。何時の間にか私はこの老学士と仲好に成って自分の身内からでも聞くように、その制えきれないような嘆息や、内に憤る声までも聞くように成った。

私達は揃って出掛けた。学士の口からは、時々軽い仏蘭西語なぞが流れて来る。それを聞く度に、私は学士の華やかな過去を思いやった。学士は又、そんな関わない風采の中にも、何処か往時の瀟洒なところを失わないような人である。その胸にはネキタイが面白く結ばれて、どうかすると見慣れない襟留なぞが光ることがある。それを見ると、私は子供のように噴飯したくなる。

白い黄ばんだ柿の花は最早到る処に落ちて、香気を放っていた。