Japanische Klassiker mit Furigana
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ちどり
千鳥
鈴木 三重吉
Lesen Sie 千鳥 (ちどり) von 鈴木 三重吉 (すずきみえきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.951 Zeichen · 41 Bildschirme
「父やん、はあ止めにしなんせ」と常吉が鉢巻を取った時には、もう馬の影も地に写らなかった。自分は何時間おったか知らぬ。鳥貝の白帆もとくにいなくなっている。
「旦那は先い往んなんせ。お初やんが尋ねに出ましょうに」と母親がいう。自分は初めて貝殻の事を思いだして、そこそこに水天宮のところまで帰ってくる。
夕日がはるか向いの島蔭に沈みかかっている。貝殻はもう止そうかしらと思ったが、何だか気がすまぬゆえ、せめて三つ四つばかりでもと思って干潟へ下りる。嫁の皿という貝殻がたくさんころがっている。拾いだすとなかなか止められない。とうと片っ方の袂へおおかたいっぱいになるまで拾う。
上へ上ってみると、自分の歩いた下駄の跡が、居坐った二つの漁船の間にうねすねと二筋に続いている。帰ったら藤さんが一番に出てきて、まあ何をしておいでになったんですと言うであろう。そして貝殻を玄関へうつしだすと、おやたくさんにまあと言って嬉しそうにするであろう。自分はそれをもうあったことのように考え浮べながら、袂を抱えて小早に帰る。豆腐屋の前まで来ると、お仙が門口でカンテラへ油をさしていた。
丘を上る途中で、今朝買わせたばかりの下駄だのに、ぷすり前鼻緒が切れる。