Japanische Klassiker mit Furigana
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はんにちあるき
半日ある記
寺田 寅彦
Lesen Sie 半日ある記 (はんにちあるき) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.975 Zeichen · 6 Bildschirme
中に細長き池あり。荷葉半ば枯れなんとして見る影もなきが一入秋草の色に映りて面白し。春夏の花木もあれども目に入らず。しのぶ塚と云うを見ているうち我を呼びかける者あり。ふりかえれば森田の母子と田中君なり。連れ立って更に園をめぐる。草花に処々釣り下げたる短冊既に面白からぬにその裏を見れば鬼ころしの広告ずり嘔吐を催すばかりなり。秋草には束髪の美人を聯想すなど考えながらこゝを出でたり。腹痛ようやく止む。鐘が淵紡績の煙突草後に聳え、右に白きは大学のボートハウスなるべし、端艇を乗り出す者二、三。前は桜樹の隧道、花時思いやらる。八重桜多き由なれど花なければ吾には見分け難し。植半の屋根に止れる鳶二羽相対してさながら瓦にて造れるようなるを瓦じゃ鳥じゃと云ううち左なる一羽嘲るがごとく此方を向きたるに皆々どっと笑う。道傍に並ぶ柱燈人造麝香の広告なりと聞きてはますます嬉しからず。渡頭に下り立ちて船に上る。千住よりの小蒸気けたゝましき笛ならして過ぐれば余波舷をあおる事少時。乗客間もなく満ちて船は中流に出でたり。雨催の空濁江に映りて、堤下の杭に漣寄するも、蘆荻の声静かなりし昔の様尋ぬるに由なく、渡番小屋にペンキ塗の広告看板かゝりては簑打ち払う風流も似合うべくもあらず。