Japanische Klassiker mit Furigana
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なんとうたん
南島譚
Lesen Sie 南島譚 (なんとうたん) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.434 Zeichen · 11 Bildschirme
司祭に導かれて神前に進む彼の神々しさに、島民共は斉しく古英雄の再来ではないかと驚嘆した。彼に仕える下僕の一人に、昼間の彼の主人たる第一長老と覚しき男がいる。此の男の彼を怖れる様といったら、可笑しい位である。それが面白さに、彼は、第一長老に似た此の下僕に一番酷い労働をいいつける。漁もさせれば、椰子蜜採りもさせる。我が乗る舟の途に当るからとて、此の下僕を独木舟から鱶の泳ぐ水中に跳び込ませたこともある。哀れな下僕の慌てまどい畏れる様が、彼にいたく満足を与える。
昼間の劇しい労働も苛酷な待遇も最早彼に嘆声を洩らさせることはない。賢い諦めの言葉を自らに言って聞かせる必要もなくなった。夜の楽しさを思えば、昼間の辛労の如き、ものの数ではなかったからである。一日の辛い仕事に疲れ果てても、彼は世にも嬉しげな微笑を浮べつつ、栄燿栄華の夢を見るために、柱の折れかかった汚ない寝床へと急ぐのであった。そういえば、夢の中で摂る美食の所為であろうか、彼は近頃めっきり肥ってきた。顔色もすっかり良くなり、空咳も何時かしなくなった。見るからに生き生きと若返ったのである。
丁度哀れな醜い独身者の下僕が斯うした夢を見始めた頃から、一方、彼の主人たる富める大長老も亦奇態な夢を見るようになった。