Japanische Klassiker mit Furigana
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たまご
卵
夢野 久作
Lesen Sie 卵 (たまご) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.782 Zeichen · 8 Bildschirme
「オトウサンオトウサンオトウサンオトウサンオトウサン」
それは死に物狂いに藻掻いている小さな人間の声のようでした。三太郎君はハッと眼を醒ましました。
卵は三太郎君のミゾオチの処で、大病人のように熱くなっていました。その中から放散する小便のような、腐った魚のようなあたたかい臭気が夜具の中一パイに籠もっています。
三太郎君は慌てて卵を抱え直すと、そのまま起き上って、大急ぎで雨戸をあけました。……もとの処に返しておこう……というような気もちで足探りしいしい庭下駄を突っかけましたが、あまりあわてておりましたせいか、思わず前にノメリそうになった拍子に、真暗なお庭の沓脱石のあたりへ卵をコロリと取り落しました。……と同時にバッチャリと潰れた音がしたと思うと間もなく、生あたたかい、酸っぱいような小便のにおいがムラムラと顔に迫って来ましたので、三太郎君は、ヨロヨロとあとしざりしながら顔をそむけました。
空には一面に星が散らばっていました。
三太郎君は、あとをも見ずにピッシャリと窓を閉めました。全身の汗がヒヤヒヤと冷え乾いて行くのを感じつつ、寝床にもぐって、ワナワナとふるえておりましたが、そのうちにウトウトしたと思うと、又、ハッと眼を醒ましました。