Japanische Klassiker mit Furigana
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こぼく
古木
豊島 与志雄
Lesen Sie 古木 (こぼく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.648 Zeichen · 24 Bildschirme
最初の大震動の後、柴田家の人たちは椎の木のそばに集りました。余震は頻繁に起って、屋内は危険でした。夜になると、椎の木の根本に蓆と蓙と布団を敷いて、野宿をしました。両隣りの家の人たちも、そこに野宿に来ました。次の夜も、同じ野宿が続きました。
この野宿の時、七歳になる幹夫は、殆んど眠らなかったようでした。二人の姉はよく眠っているのに、幹夫だけは、いつも眼をぱっちり開いていました。久江がいくら寝かしつけようとしても、幹夫はまた眼を見開きました……。
そのことが、次の夜は、姉の千代子にも感染しました。二人とも、言い合せたように、眼を見開いては、椎の木の上方を眺めていました。久江が注意を与えると、おとなしく眼をつぶりましたが、やがてまた眼を見開きました。そして久江はうとうとしている間に、二人の囁き声を聞きつけました。
「見えるの。」
「見えるよ。」
「どこに。」
「上の方、大きい枝の、先んところ。」
「あたくし見えないわ。」
暫く言葉がとだえました。
「まだいるの。」
「いるよ。」
「うそ。」
「ほんとだよ。あの大きい枝……。」
また言葉がとだえました。
久江は半身を起しました。