Japanische Klassiker mit Furigana
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こぼく
古木
豊島 与志雄
Lesen Sie 古木 (こぼく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.648 Zeichen · 24 Bildschirme
切株を二三尺。なるほど、わたくしもそこまでは考えませんでした。」
「それだけだ。頼むよ。」
「宜しゅうございます。」
栗野老人は巳之助の顔色を窺いました。なにやら苦悩めいた表情がありました。それを見て取って、栗野老人は辞し去りました。
巳之助はなお暫く坐っていました。頬の肉に軽く震えが来て、額が汗ばんでいました。栗野老人の饒舌などは上の空に聞き流していましたが、椎の木の伐採を頼む自分の言葉が、胸にひしと反響する心地で、それに沈湎してゆきました。
付添いの看護婦に促されて、巳之助は我に返り、床に就きました。湯たんぽを入れた足先になお冷たい感じがあり、胸元に熱苦しい感じがありました。それを意識から追い払うようにして、椎の木をじっと眺めました。裸の枝、黒ずんだ巨幹、それが中空に突き立ってる静けさのうちに、枯死の寂寥と寒冷とが籠っていました。
――俺はあの椎の木に、甘えてるのであろうか、それとも抵抗してるのであろうか。恐らく両方だ。死を予感する思いは、あれに甘え、その予感を克服しようとする思いは、あれに抵抗する。両者が融合する安らかな境地は、どこに見出さるるであろうか。