Japanische Klassiker mit Furigana
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こぼく
古木
豊島 与志雄
Lesen Sie 古木 (こぼく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.648 Zeichen · 24 Bildschirme
桜の花が枝いっぱい咲いていました。その桜の大きな幹を、久江は、小さな握り拳で叩いていました。いくら叩いても、桜の幹はびくともしませんが、それでも、花弁がひらひらと散っていました。それをもっと散れもっと散れというように、久江は幹を叩いていました。
巳之助がそばに行っても、久江は振り向きもしませんでした。
「怒ってるの。」と巳之助は言いました。
久江は黙っていました。その眼に、ぽつりと、光った涙がたまっていました。
巳之助は囁くように言いました。
「もう喧嘩はやめようよ。僕たち、知ってるの、僕たち……いいなずけだって。」
久江は顔を挙げました。そして眼の中まで、そこにたまってる涙まで、真赤になりました。それから突然、大きな椎の木の方へ逃げてゆきました。駆けてゆくあとから、桜の花弁がひらひらと散りました。
巳之助も後を追ってゆきました。
久江は椎の木の向う側によりかかって、遠くに眼をやっていました。巳之助もそこに並んで、遠くを眺めました。無言のうちに時間がたちました。
頭の上の椎の茂みに、ばさっと大きな音がして、それから、ばさばさ、さっさっと、風を巻き起すような音がしました。