Japanische Klassiker mit Furigana
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ねむのきのかげ
合歓木の蔭
山本 周五郎
Lesen Sie 合歓木の蔭 (ねむのきのかげ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.740 Zeichen · 27 Bildschirme
六
――そしてとうとうまたこうしてお会いするときがめぐって来ました」
言葉の意味はほとんど理解しなかった、その必要もなかった。舌のさきだけで語られるささやき、思いをこめたその調子が奈尾を酔わせ云いようのない恍惚感にひきいれるのだ。
「幸福をこわさないようにしましょう、五日めの夜ここでお待ちしています、五日めごとに、お願いです、来てくださることを信じていますよ」
その明くる朝、寝所から起き出た奈尾の、生き返ったように元気な、さえざえと明るい顔に半三郎は驚きの眼をみはった。
六
奈尾は熟睡するようになり、眼に見えて快活になった。なおざりにしがちな良人の世話もまめまめとするし、召使たちにも笑顔をみせた。ただ一つ欠けていた夢が与えられたのである、日々はもう退屈ではなかった、いつも身内に生きる歓びが感じられた。――五日めごとのささやき、それが平板な灰色の生活をいやしてくれる、躯じゅうの神経に火を放ち、しびれるように感覚を陶酔させてくれる。もちろんいかなる恋もそこでとまっていることはできない、いつかは危険の近づいてくることを、奈尾はようやく感じ始めた。
――そのとき自分はどうしたらいいだろう、拒みとおすことができるだろうか。